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アラサー会社員みりがいろいろ書くやつ

サラバ!(著 西加奈子)を読みました

アラサー会社員みりです。

こちらは、ミュージカルやコスメなど、好きなものについて何やかんや書いているブログです。

 

 

今日は珍しく本です。

西加奈子さんのサラバ!を読んだので書きます。

文庫を買ったのですが、この本は上中下と3巻に分かれています。

とてもボリュームのある小説です。

3冊それぞれ読み終わった時に感想を書き留めていたので、書いていきます。

 

いつものように、ネタバレ回避した文章を書けないので、ネタバレは絶対に無理!という方は読まないでくださいね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【上】

主人公、歩の視点で話は展開していく。

家族を中心に描かれているが、登場人物は個性豊かで、 性格が浮かび上がってくる。

歩は父の転勤でイラン、エジプトに住む。

西加奈子さんについて調べてみると、歩と西さんは同じくイランで生まれ、2歳まではイラン、その後エジプトでの生活を経験している。

この本では、歩はイランで生まれ、その後すぐに帰国しており、イランでのことをあまり覚えていないため、エジプトでの描写が濃く描かれている。


エジプトでのヤコブとの話は、特に濃密な時間を過ごしたというのが伝わってくる。

出来事が丁寧に描写されており、少年が何を思ったか手に取るように分かるようになっている。

イランからの帰国後に通っていた日本の幼稚園で、クレヨンを交換する遊びが流行っていたことや、その後の学生生活でもクラスでの自分の地位のようなものを自覚して行動したり、歩はとても大人びた考えをする子である。

そのへんは、お母さんとは対照的に描かれていると思った。

母は自分の決めたことは曲げないし、自分より子どもを全て優先するといったことはしない人のように見える(歩の目線だからかもしれないが)。

 

 

【中】

この本では、エジプトからの帰国後から主人公が大学を卒業した後 数年までが描かれている。

その間に、登場人物の身にはいろいろなことが起こる。

クラスメイトの須玖はヤコブに通ずるようなものを感じた。下巻にも出てくるのだろうか。震災の影響で落ち込んでしまった須玖に歩は踏み込めなくなってしまった。

 

歩の彼女、晶に言われた、人を下に見ている(詳細忘れたけど)というところ、当てはまる人は多いのではな
いかと思う。

頑張っている人をばかにしたり、下に見て自尊心を保つというか。ドキッとした。

上巻にも描かれていたが、姉と宗教的なものの結びつきはどんどん強くなっていった。

この本には、サトラコヲモンサマのことが描かれている。

最後に矢田のおばちゃんから本当の話を聞くときには、自分も歩と一緒に衝撃を受けた。

姉は真実を知ってどう思ったのだろうか。

ドバイ転勤になった父についていくことになった。

 

この本の最後のほうには、歩がこれから転落していくのだろうという確信めいた予感があり、心がざわざわする。

しかし、読むのをやめられない。下巻を早く読みたい。

 

 

【下】

読了後は、「壮大な自伝だった」という感想を持った。

生まれた瞬間から30代の自分まで丁寧に書きつづることができていて、読み終えてすごいなと感動した。

下巻には、ずっと連絡をとっていなかった須玖も、あまり会わなくなっていた大学での友人 鴻上も、子ども時代エジプトで別れたきりになっていたヤコブも出てきた。

みんな、歩にとってかけがえのない友人である。

上中下巻、どの巻を読んでも登場人物は休まず動き続ける。

特に姉と歩の関係性が変わるところは、上や中を読んでいた自分が見るととても驚く部分だと思う。

姉は 矢田のおばちゃんのための旅を通じて、自分が揺らぐことのない芯のようなものを見つけた。

矢田のおばちゃんはこうなることを分かっていたのだろうか。

いずれにせよ、信じる者は強い。

この話と宗教的なものはやはり切り離せないのだなと思った。

 

父と母の話は、歩目線であるということもあり、あまり深く考えていなかったが、歩が父に話を聞くことができたとき、そうだったのかと腑に落ちた。

 

こんなに長い物語だけれど、最初の書き出しについてや、この物語をどう書いたかというところを最後に書いていて、歩=西加奈子というふうに結び付けて考えることができた。米原万理さんの『オリガ・モリソヴナの反語法』を読んだとき以来のボリューム感だった。

文体は分かりやすいし、米原さんの本よりも政治的な知識は必要ないが、一人の人生を追いかけるという点で似ているなと思った。

 

 

 

 

長くなりましたがこんな感じです。